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人権規約施行監督連盟(通称Covenants Watch、以下CW)は、台湾・台北に拠点を置く非政府組織で、台湾国内における人権理念の促進のために活動する市民団体と個人からなる、人権活動家の連合体です。台湾は、1970年代から現在に至るまで、国際連合をはじめとする国際機関の活動から除外されており、人権関連機関もその例外ではありません。台湾にとって、外部からの監督がない状況で、いかに国内の人権状況を国際水準に保つかが大きな課題でした。CWはこのような状況を受け、国際条約審査制度に代わる、台湾特有の条約審査制度の導入に尽力しました。この条約審査は、台湾政府に課されている人権保障上の国家義務を明確にし、国内法または政策が国際人権関連条約に則したものになるよう精査することを主な目的として行われます。また、国内での活動に加え、国際社会でも活躍の場を広げており、国連人権理事会の普遍的・定期的レビュー(UPR)とそれに伴う特別手続に貢献しています。
CWを筆頭とするNGOの長年の努力が台湾政府を動かし、国際条約審査制度の国内版を台湾に創設することになりました。この台湾特有の条約審査制度は、本来の国連における報告制度を模倣するに留まらず、様々な点を改善することに成功しています。
国内報告制度は、国際専門家、台湾政府、そしてNGOの三部門が共同で行います。スイス・ジュネーブで行われる国連の条約審査制度では、レビュー対象国が提出した国内人権状況報告書に基づいて条約機関が審査するのに対し、台湾の条約審査制度では、4年に一度、民間団体によって選出され台湾政府によって招聘された国際専門家たちが台北で審査を行います。ジュネーブでの審査が各国およそ1日半ほどで行われる一方で、台北での審査は5日間かけて行われ、またNGOの発言の機会が多く設けられています。国際専門家評議会は、このように長い時間をかけ慎重に審査を行い、最終的に「総括所見と勧告」と呼ばれる文書を作成します。この「総括所見と勧告」では、現在の国内人権状況の問題点と、今後いかに台湾政府がその問題点を改善していくべきかが示され、次回の条約審査の際に、その改善状況が再審査されます。このプロセスは、実際の国連における審査と全く同じです。
国内人権機関
人権侵害を引き起こすのは、何も私人や法人だけではなく、国家による国民への人権侵害の可能性も大いにあり得ます。そのような場合に、人権侵害の疑いがある国家機関に対して調査や訴訟が行えるよう、国家機関である裁判所とは別の「国内人権機関」の設立が提唱されています。国連は1993年12月の総会において、「国内人権機関の地位に関する原則(通称パリ原則)」を採択し、独立性や多様性など国内人権機関が備えるべき性質を列挙しています。
李明哲案
2017年3月19日、台湾の人権活動家である李明哲(Li Ming-Che)が中国当局によって逮捕され、同年11月28日に台湾人として初めて国家転覆罪の容疑で5年の懲役刑を言い渡されました。この事件における中国当局による刑事手続は、国際法のみならず中国の刑事訴訟法にも違反しています。またこの判決では、李が台湾国内で行ったSNSでの発言を基礎として判決が下されており、基本的人権として国際法や台湾国内法で保護される「言論の自由」に明らかに反しています。
チベット
チベットは現在、中国南西部にある自治区の一つですが、以前は一つの主権国家として存在していました。1950年の中華人民共和国によるチベット侵略ののち、「十七か条協定」によってチベットは中国の一部に組み込まれました。チベット人は、漢民族とは全く異なる言語や文化、宗教を持っていますが、中国政府による中国語普及政策やチベット仏教寺院の取り壊しなどの激しい弾圧を受けており、現在ではチベット語が話せないチベット人も多くなってきています。また、チベット人から民族の指導者として敬愛される、チベット仏教の最高位ダライ・ラマは、中国の弾圧を逃れるために、インド北部のダラムサラに亡命を余儀なくされています。
施行法
台湾は、中国との主権問題のために国際連合への加入が阻害されており、そのため、国連が制定した人権関連条約を批准することも、人権関連の国連機関と連携することもできません。そこで台湾は2009年、「国際人権規約に関する施行法」という国内法を制定しました。この法律によって、本来ならば国連加盟国にしか効力が及ばない国際人権規約が、台湾国内でも法的拘束力を持つようになりました。国民は、国際人権規約に反する人権侵害があった場合に、国内の裁判所に訴えることができます。また、この法律によって、国内の人権状況が条約規定に沿っているかを定期的に審査する制度の設置が義務付けられました。台湾は既に5つの人権関連条約(自由権規約、社会権規約、女子差別撤廃条約、子どもの権利条約、障害者権利条約)に関する施行法を制定していますが、まだ残り4つの人権条約に関する施行法の制定も期待されています。